2017年12月14日「スーパープーチン」展

現代思想』のウクライナ特集で、プーチンを題材にした文学作品についての論考を眺めていて、唐突に思い出したことがある。人生というのは常に唐突なものですね。明日あなたも本屋で見かけた黒いワンピースの女の子に唐突に恋に落ちたりその子が実は彼氏と店に来ていたことに気づいたり一念発起してトウモロコシ農家になったりごま油搾り機の画期的な改良案を思いついたりするかもしれないわけですし。

唐突に何を思い出したかというと、2017年にモスクワに留学をしていた際に訪れた「スーパープーチン」展についてだ。目にしたものがグロテスク過ぎて、記憶の底に封じ込めていたのかもしれない。スーパープーチン展と検索すると、日本語でも多少情報が出てくる。当時は私も日本語で最初に情報を手に入れて、それからロシア語の情報を漁り実地に訪れたと記憶している。

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そもそも2011年頃から、柔道着を着たプーチンをスーパーヒーロー化した漫画がロシアのネット上には出回っていたようで、上記の展覧会もその流れを汲んでいたのだろう。

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当時は日本でも、プーチンをなんとなくネタ化する雰囲気というのはまだあった。Twitterで「スーパープーチン」と検索すると、上のニュースを見た人たちから「アツイ」「いい具合に狂ってる」「面白そう」「行ってみたい」などなどの声が出ている様子が見られる。さすがに現在ではこういったものを面白がる雰囲気は消し飛んだ感があるが。

言い訳がましいが、私がこの展示会を訪れたのは、こういったプーチンいじりを好んでいたからではなく、ロシアのナショナリズムとポップ・カルチャーの交差する場所みたいなものに興味があったからである。事前の調べでは、開催場所は有名なアートスペースらしいということだったので、それなりに客がいるのかと思いきや、行ってみたらそのアートスペースの謎の離れみたいなところで目立たず開催されており、客が私以外誰もいなかったことが強く記憶に残っている。そう考えると、上記のようなネット上のノリというのは、ロシアにおいてですら必ずしも現実世界には染み出してきてはいなかったのかもしれない。

今となっては日本はおろかロシアでも誰も話題にしているでもないだろうが、見に行った日本人なんてほとんどいないのではないかと思われるので、思い出したついでに、これが当時の雰囲気だったのだという記録をとどめておくことにする。写真の写りが悪いのは、当時所有していたスマホの性能の限界に拠るものです。

そういえば、ヴィクトル・ペレーヴィンの小説『iPhuck10』に、熊に乗ったプーチンがどうのこうの、みたいな描写があった気がするのだが、熊に乗っているプーチンというのは、どうもロシアのネットミームのひとつみたいだ。