「下北沢に住んでます」と言ってもギリギリ嘘にならない距離に住んでる

よって、私が『街の上で』とかに憧れるモテ乞いサブカル色懺悔野郎なら下北沢住みを僭称するということもあるだろうが、私には自制心というものが備わっているのでそんな愚かな真似はしない。古川琴音かわいい。

仕事ついでに下北沢で飯を食い、古本屋に寄った。1冊100円の『3月のライオン』だけ買って帰ろうかと思ったら、文学の棚になぜかやたらドストエフスキー関連の書籍が充実していたので、「充実してらぁ」と思った。

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この淵上克司という方を寡聞にして存じ上げなかったのだけど、あとがきによると、1947年生まれのロシア文学者で、東大の大学院を修了後広島大学に奉職したものの、40歳で若くして事故で亡くなられたのだそうだ。その後、それまでに出していた論文を、同じくロシア文学者の亀山・諫早両氏が編纂して書籍化したらしい。知らないことがいっぱいある。やはりたまには書店に足を運んで、しばらく棚の前でくねくねしてみないとね。

レーミゾフなんて、白水社から出ていた『第五の悪・悪魔め!』という作品集を学生のころ読んだだけで、それももはやどんな内容だったか憶えていない。今となっては研究されている方もかなり少ないし、今後新しく訳が出てまた日本の読者が書店で手に取って、という日が来そうな雰囲気は今のところない。我こそはレーミゾフ研究に着手するっせ、という若い人がいるなら本書をお譲りしてもいいくらいだが、いなそうな気がする。

文学翻訳や研究の蓄積などというものも、それを誰が手に取るでもないなら、高校生カップルが砂浜に書いた「〇〇大好き!」の文字のごとく、打ち寄せる時間に消し去られるのを待つのみなのかもしれず、もっとも16,7歳のあとさき考えない「大好き!」はかき消されたほうがいいと思うが、それはまた別のお話であって、淵上氏の「大好き!」は俺には届いている。