虎子石もっちりポーチとは何の謂いか

暑い暑いで日が暮れるわい、と諦めて太田記念美術館に行ってみた。原宿の駅の程近くに位置する浮世絵専門の美術館である。現在のテーマは「浮世絵動物園」。

浮世絵には何らの知識もないので、誰の作品のどこがどうとか、そういう分析的な視点は知らない知らない!(CV:井口裕香)という具合であるが、普通にポップで面白い作品がたくさんあって、暑熱を切り裂いて見に行った甲斐があったというものである。厳密には暑熱によって半分液状化していたが*1

図録を買いましたから、現地で見て気に入ったものをいくつかピックアップし、名指しし、一匙の感想を加え、目にもの見せてやりたいと思う。

下は「仮名手本忠臣蔵」のパロディらしいが、富士山まで蛙になっていて、富士山は蛙にしなくていいだろと思った*2

歌川国芳「蝦蟇手本ひやうきんぐら」
太田記念美術館監修、赤木美智・渡邉晃・日野原健司著『浮世絵動物園:江戸の動物大集合!』小学館、2021年、88頁)

下は、遊郭で飲むだけ飲んだ帰りに狸に化かされ、奇行に及ぶ3人のおっさんらしい。私も飲み過ぎた日の帰り道は大体こうなって(鍬を上に突き出し草履を頭に乗せふんどしはほどけて)いる。

歌川広景「江戸名所道戯尽」三 浅草反甫の奇怪
(赤木・渡邉・日野原『浮世絵動物園』118頁)

下は、安政の大地震1855年)発生時にナマズたちが、ナマズ地震を起こすという迷信を流布しなかった人間のみを選別し助け出している図らしい。私も自然科学の子なので、次回の地震の際にはナマズに助けてもらえる自信がある。解説によると、鯰絵というのは当時の政府の敷いていた検閲の体制を掻い潜ってこっそり出版されることが多かったため、作者が不詳のケースが多いのだそうだ。「サミズダート самиздат」ならぬ「ナマズダート намаздат」ですね?違いますか?

作者不詳「世直し鯰の情」
(赤木・渡邉・日野原『浮世絵動物園』118頁)

以上です。

ちなみに、最初の写真に写っているぬいぐるみ状の物体は「虎子石もっちりポーチ」だそうだ。虎子石もっちりポーチとはいったい何なのだろうか?

*1:原宿はおっさんがひとりで出歩くにはあまりに不適当な町である。女子満載のこじゃれたカフェしかないので涼む場所すらない。お呼びでない。

*2:富士山は蛙にしなくていいだろ!!!