食事

哀れな土地、波打つ人びと

たまに行く小さな映画館がかつてないほどの人で賑わっていて、みな列をなしてパンフレットを買い求めている。館内に入れない。何事かと思ったら、俳優の井浦新が舞台あいさつに来ていたらしい。私にとって井浦新と言えば、昔モスクワで見た三島由紀夫の伝記…

お前は赤ままの花やカザフのうどんを歌うな

「カザフスタンに何しに行くの」と姉に問われる。 本当のことを答える義理はない。厳密に言うと、義理はある(血がつながっているので)が、答えて理解してもらえるかどうかは分からない。 私は少し考えて「カザフうどんを極めに行くのだ」と答える。 「うど…

ナマスカラーム、親しからむ男女

カレー屋で隣の席に、友人以上恋人未満みたいな男女が座っている。男がずっと仕事の苦労話や心構えを語り、女が半分くらい敬語を混ぜながら応答している。これは愛なのだろうか?隣席のカップルの会話など聞くな、という話だが、聞くともなくすべて耳に入っ…

アンダープレッシャー

現代人は日々途方もないプレッシャーにさらされ疲弊している。上司、教師、父、母、夫、妻、友人、彼氏、彼女、同期、顧客、フォロワー、マスコミ、世間、試験、受験、就活、常識、責任、迷信、憶測、猜疑、陰謀、風説、風雪、太陽、大地、大気、深海、闇、…

2016年のかぼちゃビール

コンビニで「芋」ビールを見つけた。最初は芋焼酎のソーダ割りかなにかかと思ったが、パッケージに「ホップ」とあったので、ビールと分かった。 これを飲んで思い出したことがある。7年ほど前、金はなく、それでもなんとかして日々の生活にアルコールの彩り…

ただ垂直方向に落ちていく暗く深い、深い穴

過去の話ばかりしている人間に晩夏の風。『夏へのトンネル さよならの出口』とは一体なにか?これはつまり、過去にとらわれるな、というお話。 ネット上で「ジェネリック新海」という秀逸な評価を下している方がいらしたのでいそいそと見に行ったのが、なる…

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なんかもう逆に「ヌルスルタン」時代に行っておいてよかったかもしれん、という感じになっている。 www.jiji.com カザフスタンの首都がアスタナからヌルスルタンに改名されたのは2019年の3月末だったので、再度の改名となればヌルスルタンという都市の命は3…

それはぼくの思い過ごし わるいことばかり思いつく

9月4日(日曜日)、近所の駅で油そばを食っていたら暇だったので、存在に気づいて、近所の別の駅のBOOKOFF(ブックオフ)にチャリで追突した。学生のときに(学生時代、それは長い)、ダルさがすごくて、散歩がてら近所のBOOKOFF(ブックオフ)にしょっちゅ…

生ハムのマリオカート

『NOPE』を見た。 基本的に私はホラーを見ない。怖いからである。たしかに私は臆病で小心者で腑抜けの腰抜け、尻子玉のひとつも彼女に買ってやれない甲斐性なしの根性なしかもしれない。しかしそれ以上に、ホラーを作る人と激辛料理を作る人は同じように意地…

つめた~い

知らんが、今日という日は「ビールの日」らしい。 だからというわけではないが、デパ地下でビールという飲み物を買ってきた。これまで生きてきてビールを飲んだことはなかったが、これを機に飲んでみようと思う。ペットボトルのビールって日本ではあまり見か…

確かめたのなら伝説じゃない

私は、何やら黒くて軟らかく、ねばっこいものを食べたのだが、しかし、それが何であるかわからなかった。*1 『ゴンチャローフ日本渡航記』より 由あってゴンチャロフの『日本渡航記』を読んだ。ゴンチャロフの『日本渡航記』を読まねばならない"由"とはいっ…

いかのおすし

新しいパソコンを入手した。 これまで使っていたノートパソコンを買ったのがたしか2014年だから、いくらなんでももうそろそろいいだろう。Wordすらまともに動かない。しかし買い替えて家に届いたと思ったら、初期不良で画面に何も映らず、数時間の格闘の末に…

ハマグチェ

今週早稲田松竹で濱口竜介のまだ見てないやつ、すなわち『PASSION』と『永遠に君を愛す』*1をやってるので、見た。2本立てで1300円って安いよね。今回はどちらも『偶然と想像』との併映だったのでそっちは見てへんが。 どうしてそんなに興味があるの、という…

アナボル(あなたのボルシチはどこから)論争

濱口竜介が「不気味なものの肌に触れる」なら、こっちは「店で食ったものの写真を撮る」。熱々の料理が出てきて最初にすることが「スマホを構える」だというのは、正直未だに気恥ずかしさが消えない行為だが、日記代わりと割り切ってまめに撮っていると、ほ…

翼よ、あれがポロの火だ

先日、初台にある「シルクロード・タリムウイグルレストラン」に行った。 一足先に到着していた友人によると、その日はトヨサキさん御一行のパーティにより席が予約されているとのことで、私と友人は、おそらく普段は誰も座らないのであろう(※店員さんがめ…

とっても大好きコルネリア

「じゃ、没落の後は、なにが来るのかしら?」 ファビアンは、鉄格子のうえに垂れている小枝をむしり取って、こう答えた。「愚かさが来るんじゃないか、と心配してる」 (ケストナー『ファビアン:あるモラリストの物語』より*1) 『さよなら、ベルリン:また…

飯のことで喧嘩すな

ロシアの批評家コンビ(現在は解消)であるゲニスとワイリという人が書いた『亡命ロシア料理』という本があるが、1年ほど前にこの中の「帰れ、鶏肉へ!」という料理を実際に作ってみたという人の発言がSNS上でバズっていた*1。この本はそれ以前にも一度大き…

釈由美子

京王線が事故で止まっていたので、とりあえず京王新線のほうで途中駅まで辿り着いたのち歩いて帰った。まあ私はプルドポークを食べた帰りなので、余裕しゃくしゃくというほかない。プルプルポクポクプルドポーク。

The Beast Must Die

彩未で6年来の私怨を晴らしたのち、憑き物が落ちたようにホテルに向かう。強く雨の降る中、宿近くの居酒屋に飲みに行く。 昔まったく同じ柄の切子のコップを持っていた。なめろう旨い。バイトが北大生。北大生はなめろう。 翌日昼、「狼スープ」というラーメ…

Vengeance

札幌の有名ラーメン店「彩未」でラーメンを食い損ねてから早や6年。 前回は店の人気ぶりをまったく知らずに、北海道滞在最終日、帰路の飛行機チェックインまでの空き時間でさくっと食って帰ろうという甘い目論見を抱いていたものが見事に打ち砕かれ、長蛇の…

腑抜けども、テメェのすき焼きを見せろ

あまりにも昔のことになりすぎて若干引いているが、大学に入学して一人暮らしを始めたばかりの頃、授業や部活動についていくのも楽しいながらに多忙ななか、もう誰かが飯を作って俺を待っていはしない、ならばとにかく何か作って食べなければ死ぬのだわと、…

ギザ懐かしス

午前中にひとっ仕事浴びたのち、東京ガ大に「ドム・ディム・ドム」展を見に。今日が最終日だというのだから。 あっさり見終わる。懐石料理の突き出しと見紛うばかりにあっさりであったが、本当に突き出されたのは我々のほうかもしれない。そういう可能性も念…

サラダ文化の貧困、スカイブルー帝国の無邪気さ

都会は狭い。 そしてその居心地の悪さは、繁華街のコーヒーショップチェーンにおいて最大限発露する。スタバだろうがドトールだろうがエクセルシオールだろうが、お昼時を過ぎて皆が一服しようかという頃合いになると、押すな押すなの大騒ぎで、まともに席が…

アパートの鍵返します

なぜ日本の一地方都市に、旧共産圏のスポメニックじみた建造物が存在するのか、最後まで分からずじまいだった。 一説によると、この塔から発せられる強力な電波によって住民がみな健康でよく税を納めるということだが、結局のところはТыва市だから仕方がない…

拝島にこれ以外の用事で行くやついない

きみは「福生のビール小屋」を知っているか? なに?知らない? よほど不注意な人生を送ってきたようだね。 「ジャパニーズはフッサのBeer小屋を知らないだって?ソイツは傑作!そんなことだから日米修好通商条約を結ばされるのサ!」とバンドマンたちもお嘆…

心の魂のあら汁

2022年5月30日月曜夜8時半、渋谷、日高屋、酒も飲まずに1000円するかしないかの定食を満足そうに食って、もはや皿は空いたのだが、なお尽きず語り続ける大学生のカップル、10年か15年かそこらの時間が経ってあなた方が、同じように日高屋かどこかに入って、…

市蔵

ステーキ。 そろそろこの街から引っ越すので、最後に近所の店を食べ収めしておこうと思って、行ってみたかったけど行ったことのなかったステーキ定食店に自転車を漕いでいった。やわらかな赤身肉。守りたいその笑顔。300グラム2480円。 気づいたら往復で14キ…

令和の座敷牢

最近仕事の都合により、週一の頻度で渋谷のビジネスホテルに泊まっている。とにかく値段で選んだ結果、快適な座敷牢と呼ぶにふさわしいホテルに尻が落ち着いた。これが、我々の祖先が彼らの血と汗と引き換えに成し遂げた近代化の行く末だとでも言うのか。 た…

誰が日本人にビールのレシピを伝えたんだ、エジプト人か?

これは、モスクワのスーパーでおじさんがその場でペットボトルに詰めて売ってたビール。1リットルが70ルーブル、2018年現在のレートだと140円しない。歌いだしたくなるようなカジュアルさ。ペットボトルのビールって日本では見かけませんね、なんでだろ。 ロ…